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『スワロウテイル人工少女販売処』 ストーリーの作り方を悩む

落渕です。
おはようございます。

久々のハヤカワ文庫です。

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/06/30)
籘真 千歳

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ラノベレーベル出身でハヤカワ文庫に?、ということで色々アレかもしれませんが、その辺は置いておいて。
とりあえず、読んでて面白いです。エンタメとしての面白さは存分にあります。

あらすじをざっと言うと…ブレードランナーですねぇ。
かなり込み入った設定の、未来のディストピア的な東京自治区という独立した島が舞台。そこは、「種のアポトーシス」という不治の病の隔離施設で男女が完全に隔離されており、人間達は人工妖精を伴侶として生活していた、と。

で、ちょっとネタバレ気味ですが、人工妖精の揚羽(主人公)が「人間に害を為した人工妖精を粛清する免疫機能(非合法)」の役割を持ってまして、自治区で起きた謎の事件の捜査を独自に捜査しつつ、より大きな事件に巻き込まれていく、といったあらすじとなっています。ワァオ。サムライガンを思い出しますね…思い出しませんか。

まあ、そんなこんなでして、色々と燃える展開が用意されていたりと、サービス満点、飽きさせない作り、となっています。

特に、揚羽のキャラが、まあテンコ盛りな感じですよ。
・最低等級、規格外の五等級。
・制作者不明。
・最高の一等級認定の双子の妹がいるが、重い障害を負っており、それを自分のせいだと心を痛めている。
・外見は普通に美人だが、本人は必要以上に自分を低く評価。黒い服しか着ない。
・今の保護者は超一流の精神原型師だがドロップアウト中。彼女を甲斐甲斐しく世話している。
・恋愛とかが分からず、四歳に至る(嫁き遅れ)
・今や不要と言われている「免疫機能」を一人で受け持とうとしている。
・ちょいちょい事件現場で出くわす、中年近い刑事をからかって遊んだりしている。

どぅよ! って感じです。惚れてまうやろ。
後、終盤に明らかにされる設定だともっとすごいことになります…。
まあ、それこそ、読者の理想に近いようなキャラクターって奴ですわ。事件の中心に巻き込まれる資質があり、それに立ち向かう意志もある、という。

ということで、「アゲハーっ、アゲハァーッ」と叫びながら読んで楽しめる作品です。


で…、こっからストーリーの作り方について…。
個人的に悩んでる所なので、本作をダシに使う感じになりますが…。

本作では、緻密かつ自由に組んだ設定を原動力としてストーリーを回しています。
設定同士が本来的に抱えている構造上の圧力バランスが崩れる所に事件が発生し、事件が発端となって、より大きな設定同士の構造バランスの崩れが起き、より大きな事件へと展開してゆく、と。

コレ系の作り方だと、どうしても設定とストーリーの結合が密接になって、設定の規模の大きさに比例してストーリーの事件としての規模がどんどん大きくなってしまうんですよね。これはSF的な要素をもった長編ストーリー作品では多く見られる傾向だと思います(設定の自由度が高いので)。端的に言えば「何でもかんでも世界の滅亡につながっちゃう」みたいな状態です。
そういう中で、作中の描写を個人レベルまで落とすと、「運命の子」的なやたら重要な設定が集中したキャラができますよ、と。キーになるキャラクターを複数に分散して、並行する複数プロットとして走らせる手もありますね、『ニューロマンサー』とか。

で、個人的には、これ系の、設定を使ってストーリーを組む手法にばかり頼りがちなのですが…それだけじゃだめだよね感が最近フツフツと湧いてきていまして…。
事前に組んだ設定の構造を使って大きなストーリーを組む手法をマクロ的、と言うならば、ミクロ的な手法もあるのですね。大きな設定に頼らず、人物同士の会話などから小さな出来事を組んで小さなストーリーとする、という、いわゆる「日常系」的な手法が。
最終的に読者が触れる、描写のレベルを活かすには、ミクロ的手法でストーリーを組む力が必要になるのではないかと。そして私は、ミクロ的な組み方がすごく苦手だよな、とようやく自覚…。


自分がストーリー構築方法についてウダウダ悩んでいるせいで、レビューだかなんだかよく分かんなくなりましたが…。『スワロウテイル人工少女販売処』は、ミクロ的な出来事の組み方とか演出もキマってますよ。誤解なきよう。
自分が設定アレルギーにうなされ気味なのが…。




SF設定で、小さいストーリーを回す日常系って…『カウボーイ・ビバップ』とかですかね…うーむ、確かに。

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落渕
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