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第12回文学フリマ 出展作品「密室探偵演技」

ご無沙汰してます。秋人です。

リレー小説がまだ途中ですが、ここしばらく、
6/12(日)にある文学フリマに出展する作品をシコシコ
書いていたのでした。

何とか目処が付いたので、こちらで冒頭部分を先行公開します。

もし文フリに行くつもりの方で、興味を持たれた方は
S.L.S.改めクーロンパンダのブースに足をお運びくださいませ。
価格はたぶん300円前後になると思います。



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わたしは、もう一度それを見上げた。

薄いベニヤ板一枚でできた、粗末なドア。
ご丁寧に取っ手までついているが、
今の私にはまるきり無用の長物だ。

見つめているとイラついてきて、
今すぐ戸板を叩き破りたい衝動に駆られる。

でもここはガマン。

そんなことをしたって何にもならない。そもそも今のわたしには
【この扉を開錠することも、ましてや破壊することもできない】
のだ。

……なにしろこれは「鉄製の扉」なのだし。


上げかけた拳を引っ込め、代わりに舌打ちを一つすると、
わたしは舞台……もとい、部屋の中央に戻る。

まずは現状把握だ。
今一度、自分の置かれた状況を確認しなくては。
すべてはそこから。すべての思索の出発点。


わたしがいるのは、小学校のプールの女子更衣室。
背後の壁には鍵がかからないタイプのドア付きロッカーが
五十個ほど並んでいる。

窓はなく、出入り口が三つ。

一つはさっきわたしが八つ当たりしようとした
【外の廊下につながる扉】

そのちょうど反対側、奥の突き当たりにあるのが
【プールにつながる扉】

そしてその左手九〇度の位置にあるのが
【隣接するシャワールームへの入り口】だ。

プールにつながる扉は施錠されていないが、
この学校のプールは【地下にあり、この更衣室を通らず
外に出る方法はない】
ので今は無視する。

問題は、シャワールームだ。


シャワールームの光景を脳裏に描く。

こちらも窓はなく、出入り口も【更衣室とつながる一つしかない】

肩の高さの衝立によって仕切られた簡易な個室に分けられているが、
現状でなによりも特筆すべきことは――
【シャワールーム中央に、男性がうつ伏せに横たわっている】
ことだ。

つまりこいつが事の発端。
だがもちろん彼は(おそらく)被害者であって、
真に責めを負うべき人物は他にいるはずだ。

それから、いちおう【彼の生死は不明】というのを付け加えとこう。

女子更衣室のシャワールームで倒れている男なんて気持ち悪くて、
わたしには検死紛いのことをする気にはとてもなれなかった
(ことになっている)。


でも、わたしを混乱させているのは、
シャワールームに男が寝転がっていることでも、
廊下側の扉に鍵がかかっていたことでもない。

……うつ伏せなのだ、この男は。

それが今このシーンにおける最大の問題点。
こいつが仰向けであれば、何の問題もなかったのにっ……!


つまりこれは、罠だ。

自ら表舞台に立とうとせず、舞台裏からこのわたしを、
紅宮エリカをコケにしようとしている卑劣な何者かが仕組んだ
罠なのだ!

このまま考えなしに進めば、わたしは事件を解決できない探偵として
人々の嘲笑の的になるだろう。


いいさ。

そっちがその気なら、こっちはその挑戦を受けるまで。

宣戦布告と行こうじゃないか。
待ってろ、今に吠え面かかせてやる。


小さく息を吸って、止める。そしてわたしは力いっぱい叫んだ。

「どうしよう! 事件の現場に、閉じこめられた!!」

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  密室探偵演技 第一章「囚われの探偵」
  ※Web掲載に合わせて、改行等を調整しています。

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