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『生徒会探偵キリカ』1 この書き出しがすごい

ご無沙汰してます。クーロンパンダ落渕です。

色々と手が出なかったり足が出なかったりですが、
第十四回文学フリマは参加予定だったりします。

この体たらくでどうにかなるのか…まあどうにかなるさきっと。



生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)
(2011/12/02)
杉井 光

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もう2巻が出たという頃合ですが、講談社ラノベ文庫創刊ラインナップのキリカさんです。
杉井光御大を投入して学園もので探偵要素と、当てに行っている感じがものすごいのですが、期待に応えた出来というか、手堅い作りです。

コンプレックス持ちの少年主人公、曲者ぞろいの少女生徒会。
不器用な天才、母性的な天然キャラ、父性的な曲者の大黒柱、…と生徒会の面々は居心地のよい擬似的モラトリアム的な家族を形成しています。そこに学園内の外部や、学園外の外部の力が加わって事件が起きる…と。

武器のような、不器用な天才キャラのキリカを、「無能」な主人公のひかげが奇抜なアイデアやら詭弁で使いこなす、という型は、ラノベの定番的です。


まあ……この手の俯瞰的な視点は置いといて、今作、出だしがすごかったです。
数ページですが、スッと引き込まれるものがありました。技量の冴えというのを感じます。

ということで、つらつら引用しつつ検証してみます。

 ※ ちなみに↓の公式ページでも冒頭は試し読みできるようで。
  http://kc.kodansha.co.jp/magazine/index.php/90008

 八億円、である。



最初の一文がこれです。出だしにどうやってインパクトを与えるか、は悩まれるところですが、今作では、分かりやすく大きくて、現実的に価値を判断しやすい「もの」を冒頭に持ってきています。
さて、ここからどうつなぐか。

 僕が通っている学校の、生徒会予算総額の話だ。八億円といったらちょっとした会社の年間予算に匹敵する。我が校の実体を知らない人に行っても最初はなかなか信じてもらえない。姉に話したら「桁いくつ間違えてんの?」と笑われた。



間髪空けずに、八億円を、生徒会と結びつけます。タイトルからして生徒会は出てきているので、これを隠さず直球でつなげます。無駄がないですね。八億円→生徒会→ふしぎ! くらいのスピード感です。
第三者視点として「姉」を入れて読者と同調ですね。

 でも、中高一貫のマンモス校で、総生徒数は八千人、クラブの数は三百を超え体育会系も文化系も全国大会常連クラスの部をいくつも抱え、さらには一部の施設の維持費も生徒会予算でまかなわれているーーと説明すると、「むしろ足りないんじゃないの?」と心配してくれた。



視点を、生徒会の外の、学校全体に広げます。「八億円」という単体の概念が、具体的な活動の費用として提示されることで学校の規模、活き活きとした生徒達の活動、のイメージにつながります。
「むしろ足りないんじゃないの?」による価値のベクトルの反転。

 実際その通りだ。個人として見れば気の遠くなるような額だけれど、うんざりするほどたくさんの部活動と委員会活動に振り分けていけばあっという間になくなる。



語り手の主観を交えた文章に一旦落ちます。これの前の段落は、客観的事実+姉視点での評価での構成で、語り手が生徒会内の人間かどうかは不明でした。ここで、「うんざり」という主観語によって、語り手の位置が定まります。
個人の視点へのシフト、という感じですね。

 五月になると、委員会と部活の代表者どもが好き放題な額を書いた予算申請書を持って、生徒会室に殺到する。それらをすべて勘案、吟味、審査、嘲笑、無視して年度予算を組み上げているのは、驚くべきことに、たった一人の女の子である。



「代表者ども」「殺到する」によって、生徒会室を消失点にした集中線を描くような、動きのある文です。
「それらすべてを~」によって、その集中してくる「もの」を、個人の感情が受け止めて振り回すようなイメージ。ここに「嘲笑」「無視」が入っているのが、組織でなく個人であるかのような躍動感になります。
「驚くべきことに」は語り手の主観語ですが、「八億円」には驚いていないが、「女の子」には驚いているという対比関係になります。

焦点の「女の子」これがキリカであることは予感させられるわけですが、ここに至るまでに、八億円→学校全体 と焦点を一度拡大させておいて、「委員会と部活の代表者ども」を集中線に使った空間で、「一人の女の子」に焦点を収縮させる、という十分なダイナミズムが発揮されています。

改めて見れば、キリカのキャラ紹介としてまるで無駄がない構成であり、学校の紹介にもなっていて、主人公の立ち位置にも言及している、と、まあ素敵な出だし。

しかも、ここまでが1ページにちょうど収まっていて、「たった一人の女の子である。」でページが切れているという…。職人芸的な印象すらあります。


この「女の子」に興味を十分に引きつけられた状態で、読者は1ページ目をめくる、と。
何とも幸せな出だしではないですか。


ということで…2巻買わないと。


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落渕
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