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『オルタード・カーボン』 高度に発達したSFは神話と区別がつかない

落渕です。

久々にSFらしいSF、『オルタード・カーボン』文庫版です。

オルタード・カーボン(上)オルタード・カーボン(上)
(2010/03/27)
リチャード・モーガン

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オルタード・カーボン(下)オルタード・カーボン(下)
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サイバーパンクの流れを汲む、正当派といった感じです。
設定は
・ 人類は太陽系外に進出済み。
・ 肉体と精神は分離済み。
  精神を保存しクローンの肉体に移し替えることで不老不死が実現可能。
・ 他人の肉体に精神を移し替えることも。
・ 精神をバーチャル空間に展開する、みたいな技術もあり。
といった具合で。

タイトルにもなっている「オルタード・カーボン」。この「カーボン」は、「カーボンコピー」のカーボンでして、作中では「変身コピー」と訳されています。「保管刑」という精神を肉体から分離・凍結される刑に服した後、別人の肉体を与えられて出所するシーンで。と、まあこんな感じです。

精神の肉体の分離自体はネタとして全く新しいというわけではないですが、それが一般的な技術となって社会システムに組み入れられている姿を描いている作品は初めて読みました。(多分…)

そういうわけで、肉体と精神の分離された社会の設定も作り込まれています。
面白いのは、「歳を取るというのは疲れる仕事だ」と言っているあたり。「肉体を乗り換えれば何度も人生を続けられるけど、そんな根性を持っている奴は多くない」という人間観はなるほどと思わされます。
そんな中、本当に不老不死を実践して何世紀も生きている人間もいまして、彼らは「メト」と呼ばれています。自分が死ぬと、遠隔地に定期的に保存されている自分の精神のバックアップにクローンの肉体が与えられ、即座に次の個体が出現するというこの設定、一般人とは存在の仕方からして異なるという、まあ、ギリシャ神話的な俗情にまみれた神々ですね。

主人公、「タケシ・コヴァッチ」は、元「特命外交官(エンヴォイ・コーズ)」という経歴の持ち主で、保管刑に服していたものの、あるメトに「自分が殺された」事件の調査を依頼をされ、肉体を与えられ地球に降り立つ…といったところからストーリーが始まります。
訳者あとがきによると、作者自身、本作を「フューチャー・ノワール」と呼んでいるそうでして、乱暴に言えば『ニューロマンサー』みたいなパンクな世界です。犯罪あり、組織あり、企業あり、ドラッグあり、ハイテクあり、AIあり、肉弾戦あり、エロあり、と。

ストーリーは、振り返ってみれば「娯楽的」といえばいいかもですね。示唆的な設定はふんだんにあるんですが、「思索的」という程小難しいわけではないです。舞台は突飛だけど、お話的には普通の探偵小説です。
主人公が結構スーパーな方でして、特命係長というか。「エンヴォイの特殊技能で危機的状況から脱出だ!」みたいな所には惚れてまうアル。

うーん、雰囲気的には『ハイペリオン』に近いのかもしれません。プロットは突き詰めれば娯楽的ではあるんだけど、膨大な設定がありそれを消化しつつ組み上げていてすげー、という感じで。

メトと並んで興味深いのが、「パッチワーク・マン」という存在です。作中では、主人公を個人的な恨みから狙ってくる殺し屋なのですが、一般化すると「肉体を乗り換え続けて元の自分のイメージを失った存在」となります。主人公は、幼少時に聞いたおとぎ話の怪物の名で彼を呼ぶわけです。
義理人情の男、コヴァッチと、パッチワーク・マン…。ぐぬぬぬ…、もっと掘り下げられるかもですが、今回はこの辺で…。



ちなみに、自分的には本作、『マルドゥック・ベロシティ』に続く拷問小説という位置づけです。
なんかですね、相手を捕らえてから精神をバーチャル空間に突っ込んで、好きなだけ何度でも拷問ができるという素敵システムがあるんですよ。しかもバーチャル空間は時間の流れを速くできるので、現実世界で一服してたらバーチャル空間では数日間の拷問フルコースとか…。主人公がバーチャル空間で女性の肉体を与えられて拷問されまくるとか、もう、未来に希望が持ててたまらないですわほんま。

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落渕

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